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■タイプ別・金融翻訳者のご紹介■
【前編 外資系金融機関での実務経験者】
最近ますます翻訳力がアップしていると、社内エディターの評価が高い登録翻訳者Aさん。Aさんは外資系金融機関出身者で、当社では為替関連のウィークリーレポートやマクロ経済関連のデイリーレポートをレギュラー案件として担当していただいています。今号では、Aさんが翻訳者になるまでの経緯や、今後の目標などをご紹介します。
◆金融・経済翻訳を始めようと思い立ったきっかけと、フリーランス翻訳者になるまでの経緯
実は、外資系金融機関に勤めていた頃から金融翻訳に興味があり、いずれはプロの翻訳者になりたいと思っていました。そんな時、勤務先が金融再編の波に巻き込まれ、職場環境が大きく変わっていくのを目の当たりにし、じっくりと自分のペースでできる金融関連の仕事に長期的に携わっていきたいと考えるようになりました。当時勤めていた外資系金融機関では債券の数量分析チームに所属し、国際分散投資のベンチーマークとして利用されている債券インデックスのデータ提供、顧客の債券ポートフォリオのプロファイル分析、シナリオ分析に基づく入れ替え提案といった業務をこなしていました。また、同じチームのニューヨークやロンドンの同僚が執筆したリサーチレポートの翻訳を手がけることも数多くありました。その後転職し、バイサイドの経営企画や、金融関連の社団法人のセミナー企画といった業務に携わりましたが、よりマーケットに近い仕事をしたい気持ちが強くなり、金融翻訳者の道を選びました。
しかし、独立準備が十分でないまま職場を離れたため、プロとしてスタートできるまでに、予想していたよりも長く時間がかかってしまいました。今思えば独立する前に翻訳技術だけでなく、フリーランス翻訳者としての心構えを学び、PCなどのインフラ設備を万全にしておくべきだったと反省しています。
◆金融機関出身者として実務経験が役に立ったと感じた点と、努力が必要と感じた点
実務経験で身につけてきた債券の基礎知識は、特にクレジット関連の翻訳に役立っています。ただし、この分野も日々進化しており、当時の知識だけでは対応しきれないので、外資系金融機関のウェブサイトなどで常に新しい情報を入手するようにしています。グローバル・トゥー・ジェイからいただく仕事やフィードバックもまた、知識を増やす良い機会となっています。実務経験のメリットは、勉強しないで済むということではなく、効率的に勉強するためのコツを知っているということだと思います。つまり、信頼性の高い情報源をある程度把握しているので、必要な情報を短時間で取捨選択できるということです。もちろん、こうしたスキルは翻訳経験を積み重ねていく中で身につけられると思いますが。
一方、一層の努力が必要と感じたのは、翻訳技術です。リサーチレポートを読んで大体の意味がつかめるのと、正確で美しい訳文に仕上げるのとでは雲泥の差があります。実務経験といっても外資系の場合は特に、仕事の担当分野は限られた狭いものです。私の場合、マクロ経済レポートを読む機会に恵まれていたはずでしたが、いざ自分で翻訳してみると、「エコノミストが書く日本語」にはなかなかなりませんでした。実務経験の有無にかかわらず、きちんとした翻訳講座などで基本的な翻訳技術を身につけることこそ、プロの翻訳者になる近道だと思います。
◆翻訳者として特に気をつけていること
まず、翻訳スタイルを守る、誤字脱字をしないなどといった細かい点に注意をはらうようにしています。以前、こうした基本的な事柄はできて当然と考えていましたが、実際に依頼主に指摘されて初めて、ケアレスミスに気づいたということが何度かありました。金融翻訳では限られた時間内で一定の分量をこなさなければならず、精神的な余裕を失いがちですが、納品前には訳文を入念にチェックするようにしています。また、依頼主からフィードバックとしていただいた完成版には必ず目を通して用語・表現集を作成し、同じ間違いを繰り返さないとともに、顧客の好みをつかんでおくことも少なからず重要です。
◆今後の目標
全般的な英文読解力を向上させるのが目先の課題です。英文レポートの中には聖書や欧米の有名な詩からの引用が含まれていることも少なくないので、こうした英語も含め、どんなものを依頼されても完成度の高い翻訳に仕上げられるようになるのが目標です。
次回の特別号では、退職後の第二のキャリアとして金融翻訳のお仕事を選んだ方をご紹介します。 |