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■ 金融翻訳事情
■ global2jからのおしらせ
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■ 金融翻訳事情 ■
今月号から2005年2月号までの3回にわたり特別企画として、金融・経済翻訳の分野で第一人者のひとりであるクレディ
スイス ファースト ボストン証券会社の北原保久氏にお話をうかがいます。
― このたびはglobal2j通信の特別企画にご協力いただき有難うございます。このメールマガジンの読者は、金融・経済分野の翻訳者や翻訳業で独立することを目指している方ですが、読者の大半は、金融翻訳業界の動向、翻訳の外注需要、翻訳力向上のための取り組みについて高い関心を持っていると思います。そこで、今回は同企画の第1弾として、業界動向についておうかがいします。まずは北原さん自身が金融翻訳のプロになられたきっかけを教えていただけますか。
「大学を卒業後、当初は商社で輸出営業を担当していました。その後、親友が証券業界にいたこともあり、将来性を見据えて自分も証券会社で営業をしたいと思いましてね。第一段階として、金融商品を覚えるために、翻訳を勧められたのがきっかけでした。結果的にこんなに長く金融翻訳に携わるようになりましたが」
― 具体的には、現在どのような業務をご担当されているのですか。
「大きく分けて3種類の業務があります。ひとつは自分のチームのマネージメント、ふたつめはアナリスト、エコノミスト、ストラテジストが書いたレポートをSA(Supervisory
Analyst)*としてチェックすること。そしてもうひとつは、マクロ経済や投資戦略に関する英語のレポートの翻訳をとりまとめ、機関投資家などの顧客に提供する業務です」
*調査レポートを米国の規制に合わせて精査・承認するアナリスト。
― 金融翻訳において需要が多いのはどの分野でしょうか。また、経済状況によって、各分野の需要に変化はありますか。
「需要が多い代表的な分野は、マクロ経済、債券、株式でしょう。これから金融翻訳を学習しようとしている方は、この3つの基本分野を押さえる必要がありますね。また、経済状況によって翻訳需要が増減する分野とそうでない分野があります。まず、債券に関する需要はあまり景気に左右されず安定しています。逆に、株式に関する需要は景気に非常に左右されます。投資銀行業務に関する需要も同様に経済状況に大きく影響を受けますね」
― 最近、目覚しく需要が増えている分野はありますか。
「中国に関する需要が非常に伸びています。数年前までは、中国と、他の新興国であるインド、ブラジル、アルゼンチン、ロシアとで需要に差はあまりありませんでした。ところが、昨今の中国は世界経済を動かすほどの役割を担っていますから、投資家の関心は極めて高いですね。中国関連のレポートは、ほぼすべて翻訳されているといってよいでしょう」
― 確かに当社でも中国に関するレポートの翻訳を受注する機会は多いですね。しかも、以前に比べて短納期で依頼されることが多いように思います。中国のレポートに限らず、全般に翻訳の納期が短くなっているように感じますが、いかがでしょうか。
「よりリアルタイムに近い形で情報を提供することが求められていますので、確かに翻訳の納期は短くなっていますね。この傾向は今後も続くでしょう。例えば、米国の利上げのニュースが日本時間の朝5時にあった場合、早いところでは午前8時には翻訳したコメントが顧客に配信されています。早く情報を出さないと、価値が落ちてしまいますからね。スピード重視の傾向は、金融業界全体のトレンドでしょう。翻訳されたレポートは、印刷物として郵送するより、電子メールで配信するかウェブサイトでタイムリーに更新することが業界の主流になっていますね」
― 短納期の傾向が強まっているということは、翻訳会社や翻訳者には「スピーディーで品質の良い翻訳」が求められているということですね。景気動向と翻訳需要の関係、分野や納期に関する最近の傾向など、とても参考になるお話でした。次回は、外注需要についてお話をうかがいたいと思います。どうも有難うございました。
<北原保久氏 略歴>
上智大学外国語学部卒業後、商社での輸出営業担当を経て、1987年に現在のクレディスイス
ファースト ボストン証券会社に入社。現在は同社債券部門のプロダクション責任者として、エディター業務をこなしながら、SA
(Supervisory Analyst) として活躍中。債券ストラテジー、マクロ経済の翻訳を主体に、モーゲージ商品、クレジット・リサーチなど多くの分野の翻訳を手がけた実績に加え、翻訳学校において金融・経済翻訳の講師を務めた経験もある。
■ global2jからのおしらせ ■
イカロス出版『通訳翻訳ジャーナル』(2005年2月号)にglobal2j代表のインタ
ビュー記事が掲載されました。
詳細はhttp://www.global2j.com/publicity/index.html をご覧下さい。
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