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global2j通信~VOL.50~ 2008年6月号

■ 今月のキーワード ■

【risk appetite】リスク志向、リスク選好、リスク選好度

投資家などがどの程度リスクを取る意欲があるかを示す言葉。

(例文)
Investors’ risk appetite has been significantly affected by the recent credit crisis.

(訳例)
投資家のリスク選好度は最近の信用危機の影響を大きく受けている。

■ 金融翻訳事情 ■

【調査レポート以外の翻訳対象文書】

金融分野で翻訳需要が圧倒的に多いのは外資系証券会社などが発行する各種調査レポートですが、それ以外にもプレゼンテーション資料や目論見書などの案件もあります。今回は、これらの文書の主な取扱分野や特徴をご紹介します。

・プレゼンテーション資料
取扱分野:マクロ経済、企業の合併(M&A)、投資戦略など
特徴:読み手の興味を引くために図表を多用するなど、見やすいレイアウトになっているほか、文字量も少なめ。ただしその分、内容が簡潔にまとめられているため、原文の解釈が難しいことも。専門性の高い文書では訳文を作成するよりもリサーチに時間がかかってしまうことがあり、注意が必要

・目論見書
取扱分野:債券、株式、ファンドなど
特徴:訳文の読みやすさ以上に正確性が重視されるタイプの文書。調査レポートなどと違って繰り返しの表現や雛形となる文章が比較的多く、一度目論見書の翻訳を経験しておけば次の機会に役立つことも。複雑な仕組みの金融商品の目論見書ほど、その内容を正確に理解するための高度な専門知識が必要

・IR関連文書
取扱例:アニュアルレポート、決算報告書など
特徴:アニュアルレポートであれば、財務ハイライト、株主への挨拶、事業の概況、財務情報など、内容の構成は大体決まっている。IR関連文書の翻訳には財務・会計知識が必須。また、対象読者を考慮し、読みやすい文章に仕上げる工夫が必要

・雑誌・新聞記事
取扱分野:マクロ経済、相場、個別企業の動向など
特徴:調査レポートや目論見書などと比べて英語的な表現が多く、ただ訳しただけでは不自然な日本語になりがち。訳文の正確性だけでなく、読み物としてこなれた文章に仕上げる力が求められる

以上では、高度な専門知識や優れた日本語文章力が必要など、翻訳の難易度ばかりを強調してしまいましたが、翻訳を始めたばかりの段階でこうした案件を完璧にこなせなくとも必要以上にプレッシャーを感じることはありません。ただし、経験を積むうちにこうした「変り種」にも対応できるよう、翻訳力を向上させることが重要です。たとえ不慣れな内容のものでも常に一定の水準に仕上げられる実力を身につけた方こそ、この業界で求められる翻訳者像ですので、金融翻訳者を目指している方は色々な文書の翻訳を通じて腕を磨いていってください。

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