■ トップクラスの金融翻訳者のご紹介【後編】 ■
前号から引き続き、今号もトップクラスの翻訳者Cさんにお話をうかがいます。今回は、翻訳力の向上のためにしていることや、今後の目標についてお聞きします。
◆ 更なる翻訳力の向上のためにしていること
-翻訳力の向上のために、いつもどのようなことをされていますか?
「当たり前のことかもしれませんが、日経新聞を読むようにしています。翻訳の仕事を始めたばかりの頃は、通勤電車で新聞を読みながら気になる表現に蛍光ペンを引き、仕事が終わった後に用語集を作成するという作業をしていましたが、私はもともと文章を読むのに非常に時間がかかるので、今は目を通すのが精一杯です。当時からの癖で言い回しばかりに目がいってしまい、記事の内容が頭に残らず最初から読み直すということもしばしば…。今は仕事に直接関係のある記事しか読めていませんが、余裕ができたら他の記事も読んで表現の幅を広げたいと思っています」
-忙しいとなかなか難しいかもしれませんが、使えそうな言い回しや用語などをこまめに記録しておけば、実際の仕事で活用できますね。
「そうですね。今は実際の仕事に出てきた『用語』を拾うので精一杯ですが、余裕ができたら新聞などから表現も集めていきたいです。また、実務では自分が訳したものの完成版を読んで修正箇所を確認し、必要に応じて記録を取っていますが、こうした作業も少なからず重要ですね。同じレポートのほかの記事は、完成版をいただいた時点では読んでいませんが、後日、関係のある記事を訳すときに参考に読んでいます。本当はその場で全部じっくり読みたいのですが、今は仕方ないと割り切っています」
-質の高い仕事をするためにはそうした地道な努力が大切なのですね。
「いい仕事をするためには、一つ一つの仕事をとにかく一生懸命やることです。徹底的に原稿を読み込み、徹底的に悩み、徹底的に調べていくことが血となり肉となっていくと信じています」
◆ 今後の目標
-今後の目標をお聞かせください。
「子供を保育園に預けたり、家族に頼ったりして仕事の時間を捻出していますが、それでも仕事に割ける時間は限られており、クライアントから見れば、あまり使い勝手の良い翻訳者ではないかもしれません。そうした状況でも仕事を依頼したいと思っていただけるよう、とにもかくにも翻訳の品質を上げることが目標です。また、同じ仕事の分量でも、家族と過ごす時間をできるだけ確保できるよう、仕事の効率も上げたいと思っています」
-トップクラスの翻訳者として継続的に仕事を獲得するためには、たとえ翻訳可能な時間が限られていても「この人なら安心して仕事を頼める」という依頼主の信頼を得ることが大切なのですね。今回はお忙しい中、参考になるお話をありがとうございました。