■ 今月のキーワード ■
【TFP】全要素生産性
TFPはTotal Factor Productivity の略です。全要素生産性とは、生産の増加のうち、資本や労働などの生産要素の増加で説明できない部分の増加を計測したものであり、一般的には技術進歩、効率化などを表すと考えられています。
(例文)
Many economists seem to agree that Japan’s TFP growth substantially declined in the 1990s.
(訳例)
多くのエコノミストは、日本の全要素生産性(TFP)伸び率が1990年代に大幅に低下したことで意見が一致しているようだ。
■ 金融翻訳事情 ■
【リサーチの習慣を身に付ける】
2015年4月号でもお伝えした通り、金融・経済翻訳において欠かせないのがリサーチ力です。とはいえ、学習者の皆さんから多く聞かれるのが「リサーチ力の磨き方が分かりません」という声。そこで今回は、リサーチ力を強化する上でのヒントを、global2jの社内翻訳者が自身の経験からお話します。
何を隠そう私自身、リサーチには長らく苦手意識を持っていました。未知の用語が出てくるたびに、どうしたらよいか見当もつかず青ざめ、わずか数文字のために数時間を要することもめずらしくありませんでした(今でも時々はそのようなことがありますが…)。ところが、翻訳を始めてからかれこれ数年が経過した現在では、検索の際にどのようなキーワードを入力すると効果的か、またどのようなサイトを参考にすればよいかということが感覚的に分かるようになり、苦手意識は随分和らいだように感じます。
では、なぜそうなったのでしょうか。何より、リサーチの習慣が身に付いたことが大きな理由と言えます。
翻訳学習を始めてからリサーチの有用性に気付き、日頃の生活にも積極的に取り入れるようになりました。そうするうちに、リサーチに「知の喜び」を見出し、リサーチが習慣化したのです。調べる対象は、美容、健康、音楽など多岐にわたります。具体例を挙げると、「○○健康法がブームだけど、本当に効果があるの?」、「根拠を示す科学的データは?」、「それを否定する説は?」など。今や何か新しい情報を聞くと、それについて徹底的に調べずにはいられない「体質」になってしまいました。それが実務にも徐々にプラスに作用し始めたようです。私の場合は、実務経験をきっかけとしてリサーチの習慣が身に付きましたが、これは実務経験がなくとも意識次第で身に付けられるものではないでしょうか。「世の中のあらゆることについて、あらかじめ提示された情報だけに頼るのではなく、その真偽を含めた詳細を自身で確認する」と意識することで、リサーチ対象は無限に広がります。こうした姿勢は翻訳以外の分野でも役立つことでしょう。
まずは堅苦しく考えず、興味のあること、好きなこと、「もっと知りたい」と思うことを何でも徹底的に調べてみてはいかがでしょうか。それを繰り返すことが何よりの訓練と言えると思います。
少々偉そうに語ってしまいましたが、私もまだまだ発展途上です。これからも楽しみながら能力を向上させていきたいものですね。