■ 今月のキーワード ■
【dead cat bounce】デッド・キャット・バウンス(一時的な回復)
資産価格(特に株価)の長期的/大幅な下落後の一時的な回復のこと。「高いところから落とせば、死んだ猫でも跳ね返る」という意味で、ウォール街で生まれた表現です。資産価格に限らず、何かが一時的に回復する状況について使われることもあります。
(例文)
The IP momentum recovery is likely to be short-lived. As supply shocks are driving global industrial production momentum, a dead cat bounce in a trend of otherwise weakening demand has grown more likely.
(訳例)
鉱工業生産モメンタムの回復は短命に終わる公算が大きい。供給ショックが世界の鉱工業生産モメンタムを左右しているため、本来であれば需要が減退するトレンドの中で、デッド・キャット・バウンス(一時的な回復)になる可能性が高まっている。
■ 金融翻訳事情 ■
【街で見かけるおかしな英語】
今回は弊社のコーディネーターが街で見かける「おかしな英語」について感じたことをお話しします。
街中で意味不明な英語の看板、注意書き、メニューなどを目にしたことはありませんか。言わんとすることが理解できないものや、思わずギョッとするような表現が少なくないことに気づいている方は多いと思います。そうした「珍英語」が日本好きの外国人の間では面白いと話題に上ることもあるようですが、一般的な日本人の英語力がいかに低いかを改めて気付かされるようで個人的には複雑な気持ちになります。
日本人の英語力がなかなか向上しないのにはいくつかの理由があると考えられます。第一に、日本語と英語とでは単語、文法、発音が大きく異なることが挙げられるでしょう。母国語と英語の言語的な共通点がより多い西欧諸国の人々などと異なり、日本人は英語に関してほぼすべてを一から覚えなければならず、習得のハードルが相対的に高いと言えます。第二に、日本の学校で取り入れられている学習指導法が、必ずしも生きた英語の習得に役立っているとは言い難いことがあると思われます。最近は、より実践的な英語が学べるカリキュラムにしようといった動きも増えてきているようですが、英語を学ぶ主な目的はやはり、実際に英語を使うことよりも、学校の試験や受験で高得点を取ることになっているように感じられます。また、英語を話せない日本人教師が英語を教えている学校も多く、ネイティブの英語に触れるチャンスがまだ限られているのも現実でしょう。第三に、日本で生活していると英語を使う機会がほとんどありません。外国人観光客をターゲットにしたサービス業に従事していたり、外資系企業に勤務していたりする方は仕事で英語力が要求されますが、それ以外の日本人は日本語のみで毎日問題なく生活できてしまいます。「英語が話せればいいな」という漠然とした憧れや希望はあっても、大多数の人は実際に使う機会や必要性の少ない外国語を積極的に学ぶ気持ちにはなりにくいのではないで
しょうか。
このような状況で、日本人が生きた英語を身に付けるのはかなり難しいと言わざるを得ません。ただ、観光や就労などのために来日する外国人が増えることが予想される中、英語でのコミュニケーション能力が今後より必要になってくるのは間違いないでしょう。英語でいきなり話しかけてくる外国人が多くなっても右往左往しないで済むよう、まずはできることから実行することが重要です。会話力に関して言えば、当たり前のことですが、恥ずかしがらずに積極的に使って慣れていくことが上達への第一歩となります。日本国内でも国外でも、英語を母国語としない外国人が、決して上手とは言い難い英語を臆することなく話す姿をよく見かけます。日本人は全般にミスをすることへの恐れや不必要な羞恥心が強すぎるのではないでしょうか。最初から完璧を目指さず、言い間違えても必要以上に気にしないことが大切です。一生懸命話そうとする気持ちが伝われば聞く側も好感を持ち、理解しようと耳を傾けてくれるものです。
一方、書く英語については注意が必要です。英作文を学校で勉強したから大丈夫、と考えているのかは分かりませんが、日本人はネイティブチェックなしの「自己流英語」を公の場で堂々と使ってしまうことが多々あります。会話は間違えても消えてしまいますが、商品などに書かれた英語は後々まで残り、長期にわたって人の目に晒されます。ネイティブチェックがされていない不正確・不自然な英語表現を自社のウェブサイトや商品の説明書などに何の疑問もなく使ってしまう企業は、外国人顧客からその製品やサービスそのもののクオリティも疑われるリスクがあるでしょう。そうした危険を避けるためにも、ビジネスの場面で日本人が書いた英語を使う場合にはお金と労力を惜しまず、ネイティブによる入念な最終チェックをすることが不可欠と思われます。
いかがでしたでしょうか。今回は金融翻訳と直接関係する内容ではありませんが、日本人の英語について我々が感じていることをお伝えしました。