■ 今月のキーワード ■
【commercial traders】実需筋
実需に絡んだ取引をする市場参加者のこと。対義語は投機筋(non-commercial traders、speculators)。
(例文)
A build-up in commercial traders’ long positions suggests that they expect the price to increase.
(訳例)
実需筋のロング・ポジションが積み上がっていることからすると、価格の上昇が予想されているようだ。
■ 金融翻訳事情 ■
【紙の辞書の魅力】
皆さんは、どのような種類の辞書をお使いですか?電子辞書、PC用の辞書ソフト、スマートフォンの辞書アプリなど、何らかのデジタル化された辞書をお使いの方も多いのではないでしょうか。こうしたタイプの辞書は、文字列を入力すればすぐに結果が参照でき、情報量も膨大で、持ち運びにも便利なことから、翻訳業務には今や欠かせない存在と言えるでしょう。しかし、今回はあえて紙の辞書の魅力をご紹介したいと思います。
実はその不便さにこそ、紙の辞書の魅力があります。何か単語を調べようと思った場合、デジタル化された辞書であれば、いくつか文字を入力しただけで予測機能が働き、目的の単語がすぐに表示されます。さらにPC用のソフトでは、調べる単語をPC上でコピー&ペーストするだけで検索ができ、文字を入力することすら不要です。ところが、紙の辞書の場合には、文字を1つ1つ目で確認しながらページを順にたどっていく必要があります。確かにこれは骨の折れる作業。しかし、その過程で自然と綴りが記憶に残るという利点があります。さらに、時間をかけて調べることで、その単語に対する思い入れのようなものが生まれ、脳への定着率が高まることも考えられるのです。また、デジタル化された辞書では、結果がピンポイントで表示されるため、「余計な」情報を目にすることはあまりありません。しかし、紙の辞書では、調べたい単語や用例などの周りに、たくさんの「余計な」情報が記載されており、最終的に調べたい情報にたどり着くためには、そうした情報をある程度読まなければいけません。そのため、本来の目的以外の情報に自然と触れることになり、幅広い知識が身に付くきっかけとなり得ます。
このように、「雑多な」作業が必要なゆえに、全般的な英語力の向上に一役買う、というのが紙の辞書の魅力です。さらに、紙の辞書は「なんとなくページをめくって眺める」ことができるのも特徴。「目的達成」のためではなく、「娯楽」として日常生活に取り入れることで、さらなる効果が期待できます。
スピードが求められる実務ではデジタル版、じっくりと取り組む学習やちょっとした娯楽のためには紙版と、状況に応じて使い分けてみるのも有効かもしれません。ご参考にしていただければ幸いです。