メールマガジン

global2j通信~VOL.140~ 2015年12月号

■ 今月のキーワード ■

【IG bonds】投資適格債

IGはinvestment grade の略。投資適格債とは、格付け機関からトリプルB以上(スタンダード&プアーズであればBBB以上、ムーディーズであればBaa以上)の格付けを付与されている債券のことです。

(例文)
Credit spreads of euro-denominated IG bonds have been widening recently.

(訳例)
ユーロ建て投資適格債の信用スプレッドはここにきて拡大している。

■ 金融翻訳事情 ■

【翻訳の未来】

気が付けば、今年も残りあとわずか。皆様はいかがお過ごしでしょうか。年の瀬ということで、今回は「翻訳の未来」という少し大きなテーマについて考えてみたいと思います。

昨今、PCやスマートフォンの普及とともに、コンピューターによる翻訳の技術も急速に向上しているようです。インターネットの翻訳サイトが無料で利用できたり、話しかけるだけで内容を翻訳してくれるアプリがスマートフォンに標準装備されていたりするなど、翻訳がとても身近なものになってきています。また、やや専門的な翻訳に関しても、いわゆる「翻訳ソフト」だけでなく、ウェブ上のデータベースを駆使した「翻訳メモリ」の普及によって、そのクオリティは格段に向上してきています。

こうした技術の向上によって、人間が一から翻訳しなければならない文章は格段に減少したと言えるでしょう。このような技術革新がもっと進めば、いずれ人間による翻訳の必要性はなくなるのでは?との意見も聞かれるようになりました。

では、本当に人間による翻訳の需要はなくなってしまうのでしょうか。これはあくまで当社の見解ですが、金融・経済翻訳に限った話で言えば、少なくともあと数十年はそのようなことは起こりそうにありません。なぜなら、翻訳の基となる言葉は「生き物」であるためです。

言葉は日々進化しており、特に金融・経済などの分野では新しい言葉が次から次へと生まれては消えていきます。さらに同じ言葉でも文脈や使う人によって全く違う意味になることもあります。使われる背景、前提となる過去の事例などによっては、例えば単なる”This is that.”という文章から、何十通りもの訳文が想定されるのです。機械がこうした文章を適切な訳文に置き換えることは至難の業と言えるでしょう。さらに、「てにをは」の処理、文末の工夫など、論理的に正解を説明することは難しいけれど読みやすさを大きく左右する要素に関しても、人間の脳とまったく同じ働きをするような人工知能でも開発されない限り、やはり人の感覚に頼らざるを得ない状況は続くのではないでしょうか。

逆に言えば、こうした技術を身に付けていない翻訳者は、淘汰される可能性が高いと言えます。機械にはない希少価値をどれだけ持っているかで、生き残れる翻訳者とそうでない翻訳者に2極化することが予想されます。したがって、今後より厳しい時代が到来することは間違いないでしょう。

とはいえ、高い翻訳スキルを身に付けた翻訳者にとっては、逆にチャンスの到来とも言えるのではないでしょうか。機械には真似できない高度な技術を持つ「職人」として、これまで以上の存在価値が生まれることも考えられます。未来がどうなっているかを正確に予想することは当然ながら不可能ですが、厳しい時代が来ても生き残り、さらにこれまで以上の地位を獲得できるような翻訳者を目指して、楽しむ気持ちを忘れずにこれからも翻訳学習に励みたいですね。

今年も当メールマガジンをお読みいただき、誠にありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。皆様どうぞよいお年をお迎えください。

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