金融・経済分野専門の翻訳会社 global2j

Amelia スペシャルトライアル 【総評】

【総評】

この度は金融翻訳のスペシャルトライアルにご応募いただき誠にありがとうございました。 当社グローバル・トゥー・ジェイ(グローバル・トゥー・ジェイ)は、金融機関を主な顧客とする金融・経済専門の翻訳会社です。 今回のトライアルでは、1)金融知識(原文の正確な解釈と適切な訳語の選択)、2)文章力(日本語としての自然さ)、3)表記方法(指示を遵守しているか)、の3点に注目しながら訳文を拝見しました。

今回のトライアル企画では、残念ながら当社の登録翻訳者としての合格ラインであるA評価の該当者はいらっしゃいませんでした。 A-評価でご希望の方には別の課題によるトライアルに再度挑戦していただくことが可能です。 詳細は後日直接ご連絡させていただきます。

まずは、下記の原文・訳例と自分の訳文を丁寧に比較してみて下さい。 特に下線部分は誤りの多かった点です。

<表記に関する規定>
今回のトライアルでは、表記方法をあらかじめ規定しました。 自分の訳文が下記の点を全て反映しているか、もう一度確認してみましょう。 実際の翻訳業務では、依頼主からの指示に細心の注意を払う必要があります。

・算用数字は半角。1000単位にはカンマ「,」小数点にはピリオド「.」を
・アルファベットは半角
・英語の略語がある場合、日本語、英語の頭文字の順番で。同じ言葉が2回目に  出てきた場合は、英語の略語だけで表す
 例)初出時には国際通貨基金(IMF)、2回目以降はIMFという要領で
・文末は「だ・である」調

<トライアル原文>
The strongest quarter of 2004 will turn out to be the first,when the effects of federal income tax cuts reach their peak. We are due for another roughly $50 billion of tax refunds during the first quarter of 2004. The fiscal and housing-related stimulus won’t disappear overnight,so the underlying trend in consumer spending should remain strong over the next couple of quarters. However, given that neither lasting declines in interest rates nor new tax initiatives seem likely,stimulus will dissipate gradually. That should slow down consumer spending towards the second-half. Even if employment expands substantially, the growth rate of overall household sector cash flows seems destined to decelerate from last year’s pace, particularly in the second half of 2004. For that reason, we expect that real GDP growth will moderate back towards 3.5% in H2.

<訳例>
今年最終的に最も好調な四半期となるのは、連邦所得税減税の効果がピークに達する第1四半期だろう。 第1四半期には新たに500億ドルの連邦税還付が予定されており、財政や住宅関連の刺激効果は一夜にして消滅してしまうものではないため、消費支出は今後二・四半期に渡って良好な基調が続くと予想される。 だが、金利の持続的低下新たな減税構想の可能性は低いとみられることから、刺激効果は次第に消滅し、消費は今年後半に向けて減速しよう。 雇用が大幅に拡大したとしても、家計部門のキャッシュフロー全体の伸び率が昨年のペースから鈍化することは避けられず、特に年後半にはそれが顕著になる見通しだ。 これを理由に、当社は年後半実質国内総生産(GDP)成長率が再び3.5%にまで低下すると予想している。


金融翻訳の重要なポイント
いかがでしたか? 自分の訳文の誤りを見つけることができましたか? 金融翻訳において重要であり、応募者の多くが留意すべき点は次の通りです。

・年と年度の区別
fiscal year(年度)とcalendar year(暦年)の違いを理解し、きちんと区別しましょう。

・数字
金融翻訳では、数字のミスが致命的になります。 今回のトライアルでも、$50 billionを誤って訳している方が数多く見られました。 翻訳後には、通常の見直しの他に、数字中心のチェックもするようにして下さい。

・「四半期」に関する漢数字と算用数字の使い分け
「第1四半期」、「二・四半期連続」というように、数字の表記にも一定のルールがありますので覚えておきましょう。

・下落、低下、増加、上昇などの選別
英語が同じ動詞であっても、主語に応じて適切な訳語を選ぶ必要があります。 例えば主語がbond marketsの場合、動詞がfallであれば、「下落」でよいですが、主語がbond yields の場合、「下落」は間違いであり、「低下」が正しい表現です。 こうした主語と述語の呼応は、日経新聞の記事などで普段から注意して見ておきましょう。

・定訳の把握
専門用語は自分で適当に訳出するのではなく、必ずインターネット検索で定訳を確認しましょう。 また、特に金融・経済用語ではカタカナ表記が一般的な場合と、日本語に訳した方が一般的なものがありますので、その点もインターネット検索でチェックします。

・文末表現には変化を
文末だけに注目すると、「である。・・・・・・いる。・・・・・・ある。」というように、すべて「る」で終わっている訳文が多く見られます。 単調な文章を避けるために、例えば同じexpectを訳す場合でも、「〜と予想している」「〜だろう」「〜とみている」などと変化をつけましょう。


金融翻訳のプロになるには
上記の重要なポイントを見ても、自分が今後どのようにプロを目指していけばよいかわからない方も多いでしょう。 例えば、当社が翻訳者に求めるのは、金融・経済分野の知識、翻訳技術と文章力、リサーチ力をバランスよく備えていることですが、まずは自分の課題を知り、それを克服する学習方法を実行されてはいかがでしょうか。 以下では、キャリアや経験などのタイプ別に課題克服のヒントを挙げてみました。

<翻訳学習経験がある方>
通学・通信講座を通じて、あるいは独学で翻訳学習を進めている方の中には、「需要があるのならば、どんな分野の翻訳でも手掛けるべきだ」、「守備範囲が広ければ、何らかの仕事を受注できる可能性が高くなる」というような考えから、様々な分野に手を広げている方もいらっしゃると思います。 ただ、プロの翻訳者として長期的に安定した仕事量を確保するためには、中途半端に対象を広げるよりも、専門分野を特定し、知識と翻訳技術を高めていくほうが最終的には近道です。 現時点で専門分野が固まっていない方は、今までの実務経験、興味の対象、自分の性格などから、本当に自分に合った分野は何なのかをもう一度考え、より焦点を絞った学習をしてみてはいかがでしょうか。

<金融・経済関連の実務経験がある方>
金融機関などでの実務経験を持つ方は、専門知識が武器になる一方、翻訳技術や文章力の面で努力を要することが多いようです。 英語を的確な日本語に変換する能力は、訓練を必要とする「特殊技能」です。 「翻訳だったら自分にもできるのでは?」という考えを捨て、まずは日英の新聞記事などを丁寧に読み比べ、言葉に敏感になることから始めてみましょう。

<海外勤務・留学経験がある方、海外生活が長い方>
海外経験が豊富な方は、一般的な英文の解釈が正しくできても、金融・経済の専門用語や理論の理解が必ずしも十分でなかったり、日本語の表現力に問題があることが多いようです。 入門書やインターネットを利用して基礎知識を身につけると同時に、日経新聞などの精読を通じて日本語力の向上に努めましょう。

<翻訳の実務経験が長い方>
翻訳業に長年携わっていると、特定の言い回しや表現に固執してしまうことがあります。 翻訳の依頼主からフィードバックが得られない場合には、金融の専門家などの第三者に自分の文章の癖を指摘してもらうことで、客観的に自分の翻訳の問題点を見つめ直してみましょう。


トップレベルの翻訳者の学習方法
時間的な制約のため、個々のご質問や評価に関するお問い合わせにはお答えできませんが、効率的な金融翻訳の学習方法が分からない方には昨年と同様、学習方法のチェックリストを差し上げます。 これは、当社に登録するトップレベルの翻訳者を対象に実施したアンケートの結果をもとに作成したものです。 興味のある方は、education@グローバル・トゥー・ジェイ.com まで件名を「アメリア会員用学習チェックリスト」としてお問い合わせ下さい。 これからの継続的な学習に役立てていただければ幸いです。 今後の皆さんの翻訳力向上とご活躍をお祈りしております。

グローバル・トゥー・ジェイ採用担当

評価のことば
A-:金融知識、文章力ともにほぼ実務レベルに達していますが、非常に細かな誤訳や若干ぎこちない表現が見られます。

B+:全般的な翻訳力はかなり高い水準ですが、細かな誤訳が見られます。 金融翻訳の専門用語や独特の言い回しに十分慣れていないようです。

B:一定の翻訳力はありますが、細かな誤訳が比較的多く見られます。 金融翻訳の専門用語や独特の言い回しに慣れていないようです。

B-:基本的な翻訳力はありますが、いくつか大きな誤訳が見られ、日本語表現にも課題があります。

C:単語レベルでは意味を理解できているところもありますが、文章全体の基本的な解釈に誤りが見られます。

D:英語の基本的な文法を理解できていないようです。

評価別分布(応募者数:157人)
A-  6%
B+  11%
B   39%
B-  31%
C   12%
D   0%

スペシャルトライアル開催時に表示していた課題文は下記のとおりです。

※以下の指示に従って翻訳して下さい。
・算用数字は半角。1000単位にはカンマ「,」小数点にはピリオド「.」を
・アルファベットは半角
・英語の略語がある場合、日本語、英語の頭文字の順番で。同じ言葉が2回目に出てきた場合は、英語の略語だけで表す
例)初出時には国際通貨基金(IMF)、2回目以降はIMFという要領で
・文末は「だ・である」調

<トライアル課題>
The strongest quarter of 2004 will turn out to be the first, when the effects of federal income tax cuts reach their peak. We are due for another roughly $50 billion of tax refunds during the first quarter of 2004. The fiscal and housing-related stimulus won’t disappear overnight, so the underlying trend in consumer spending should remain strong over the next couple of quarters. However, given that neither lasting declines in interest rates nor new tax initiatives seem likely, stimulus will dissipate gradually. That should slow down consumer spending towards the second-half. Even if employment expands substantially, the growth rate of overall household sector cash flows seems destined to decelerate from last year’s pace, particularly in the second half of 2004. For that reason, we expect that real GDP growth will moderate back towards 3.5% in H2.

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